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デリバティブとヘッジ会計

デリバティブとヘッジ会計

デリバティブとヘッジ会計

ヘッジ会計の要件(1)

ヘッジ会計は、ヘッジ対象(資産・負債:取得原価評価)とヘッジ手段(デリバティブ取引:原則時価評価)との損益が期間的に会計上対応しないことに対処するものである。
その形態は以下の2通りであり、実務指針では、その双方を認めている。
「公正価値ヘッジ」:相場変動による損失の可能性がある資産または負債(予定取引も含む)で、当該資産または負債に係る相場変動が評価に反映されていないか、評価差額が損益として処理されていないもの。例:固定金利借入れの金利変動化スワップ
「キャッシュフロー・ヘッジ」:資産または負債に伴うキャッシュフローが変動するもの。例:変動金利借入れの金利固定化スワップ
ヘッジ会計を適用するためには「金融商品に関する会計基準」や「金融商品会計に関する実務指針」などに定められている通り、多くの要件が必要になる。これらについて今回から数回にわたって詳細に見ていこう。
(各会計基準や適用指針等の詳細については本連載第3回にURLを掲示したので原文にあたってください。また、本文における意見は個人的なものであり、計理処理例を含め、それらの具体的適用の可否については関係する監査法人、公認会計士等にご相談のうえ自己責任・自己判断でご対応ください。)

1.ヘッジ会計の基本的・具体的要件

まず、以下のような社内の態勢づくりから始まる(金融商品会計基準31)。なお、これらのヘッジ会計の方法やリスク管理方針等については有価証券報告書でディスクロージャーが義務づけられている(財務諸表等規則8条の2、8条の6の2、8条の8等)。
① リスク管理方針、ヘッジ方針の文書化(ヘッジ手段とヘッジ対象(リスク)の特定、ヘッジ有効性評価の方法等)
② リスク管理方針に関する明確な内部規程・内部統制組織(取引権限やその委任、事後管理方法などがポイントになる)


リスク管理規程(ヘッジ方針を含む)作成のポイント

1.書き方のポイント デリバティブとヘッジ会計
① 会計基準等に則った取引、事務、報告の流れをそのまま文書化する
② 権限規定が最重要項目である(牽制機能も考慮する)
③ 頭書に目的、方針等を記載すること。具体的な該当規定がない場合の解釈基準となる
④ 規程自体の制定権限および改正する場合の方法も規定する

2.規程の内容に盛り込むべき事項
(1)目的、取組方針(ヘッジ方針など)、対象取引の範囲、会計処理方針
・デリバティブ取引を何のために行っているのか(ヘッジのみか、運用利回り確保も含むのか、さらには短期売買を目的とするトレーディングとしても行うのか)
・どのようなリスク(リスク・カテゴリー)をもつ資産・負債、取引を対象に考えて、どのようなヘッジ手段を考えているのか(金利デリバティブ、通貨デリバティブ、為替予約、株式、コモディティやクレジットなど)、資産負債または計理カテゴリーにおける比率の目途など
・それぞれの会計処理は、時価会計、ヘッジ会計、金利スワップの特例処理、振当処理またはIFRSのどれを適用するのか
・ヘッジ会計を導入する場合は、全体のヘッジ比率、そしてヘッジ有効性の判定方法を決定(ヘッジ会計方針)
(2)取引の手続
・だれの権限で取引できるのか(デリバティブ取引は電話などで締結するなどのスピードが求められる)
① すべて事前に取締役会議で了承された条件の範囲内で行うのか
② ある程度の条件(取引金額、期間)までは財務担当役員、財務部長、課長までで可能とするのか
③ 条件(取引金額、期間)に応じて、個別に取引決裁権者を特定しておくのか
・取引相手を特定しておくのか
・取引の交渉・実行をどこの部署で行うのか(例:財務部)
・取引証票、契約書等の作成と管理(ヘッジ対象と手段の指定など識別の具体的な手順にもなる)
(3)報告・チェック体制
・会社法および金商法の内部統制システムにおいて位置付ける
・契約調印や経理処理所管の取引実行部署を違えるのか、同じ場合は違う担当者にするのか
・時価の算定について、だれが(財務部、経理部、公認会計士、取引相手等の第三者)、どのように、どの程度の頻度で行うのか、評価技法やインプットのレベルのおおよその目安など
・だれ(取締役会議、社長、担当役員)へ、どのタイミング(半期、毎月末、毎週)で、何(元本、時価)を報告するのか
(4)トレーディングを行っている場合の留意点
・時価評価による管理が必須
・取引金額を限定するのか、その場合の基準は元本か、時価か、VaRか
・評価損が拡大した場合の対応方法(ロスカット・ルール)をつくるのか
・(トレーディングを行わない場合に比べて)責任者への報告は頻度を高めることが望ましい


2. ヘッジの有効性に関する評価

(a) 事前テスト
ヘッジ手段に関しては、ヘッジの有効性について、まず事前に評価しておく必要がある。公正価値ヘッジの場合は、ヘッジすべき価額変動について、金利や為替レート等リスク単位当りのヘッジ対象およびヘッジ手段の変動額(デルタ値)の比率がおおむね80%から125%の範囲内にあることを確認することであり、キャッシュフロー・ヘッジの場合は、ヘッジ対象とヘッジ手段で打ち消し合うキャッシュフローの変動について、過去の統計(回帰分析でも可)や将来のシナリオ分析等によって、約定期間終了までの一定の時点ごとの両者の変動額の比率がおおむね80%から125%の範囲内にあることを確認することであろう(実務指針143、同Q&AのQ53参考)。

(b)事後テスト
取引実行後の管理として事後テストを報告期間ごとに実施し、ヘッジ取引が継続して高い有効性が確保されることが示される必要がある。
〔判定基準〕ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動またはキャッシュフロー変動の累計を比較し、両者の変動額等がおおむね80~125%の範囲内にあれば、高い相関関係があると認められる。ただし、事後テストでは回帰分析等の統計的手法は想定されていない(実務指針146、155~157、323、Q&AのQ53参照)。IFRS9号では、このような数値的な事後テストは廃止されており、それ以前から、筆者は事後テストにおいても統計的手法を利用すべき場合も多いと考える(次回参照)。
なお、ヘッジ会計処理として金融商品会計基準等に定める「金利スワップの特例処理」(Q&AのQ56による「金利通貨スワップ」を含む)または「振当処理」(「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」4等)を行う取引は、それらの要件を満たしていること自体が、ヘッジが有効であることの証左であるため、ヘッジの有効性の評価は事前・事後ともに不要である(実務指針158)。
なお、ヘッジ対象(予定取引を含む)の重要な条件が同一であるヘッジ手段(ヘッジ対象の元本、キャッシュフローや期間の一部に対応するものを含む)を導入した場合は、ヘッジ効果は有効であるため、その評価は不要にすべきであろう。実務指針159では、ヘッジ非有効部分がある場合には十分な検討が必要とされるが、たとえば、長期固定金利借入れの一部または全額を金利スワップ(期間はほぼ一致)により変動化する取引(公正価値ヘッジ)、または予定購入取引の一部または全額に対する先物契約については、評価しなくても「当該部分のヘッジ」は有効とすべきであろう。ただし、意見の相違もありうるため、公認会計士や監査法人との協議が必要となる。

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